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life
by Futaba

愛着を持って、長く使う ~その2 器を美しく蘇らせる「金継ぎ」~

こんにちは。
趣味で金継ぎ教室に通っているフタバです。

最近、親戚から取っ手が外れてしまったマグカップを預かったので、その金継ぎを完成させることを目標に、現在も楽しく金継ぎ教室に通っています。

そして今回は、「愛着を持って、長く使う」をテーマに、お部屋で始められる趣味をご紹介するシリーズ、前回のダーニングに引き続き第二回目として、満を持して!器を美しく蘇らせる「金継ぎ」を実践した様子をお届けします!

金継ぎとは

「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりしてしまった器を、漆と金を使って蘇らせる日本の伝統的な技法のことです。
また、金継ぎには大きく分けて2種類あり、それぞれ方法が異なります。

・本漆の金継ぎ
漆の木の樹液を『本漆(ほんうるし)』と呼びまして、この本漆を使用して直すのが昔ながらの金継ぎのやり方になります。
本漆はとても優秀な素材で、割れた器をくっつける接着剤になったり、欠けたところを埋める補修材になったりします。
もちろん金粉も本漆で付けることができるので、金継ぎするには欠かせない道具です。

・本漆以外の金継ぎ(簡易金継ぎ)
簡易金継ぎは本漆を使用せず、接着剤・エポキシ樹脂・合成うるしといった、現代で生まれた道具を使用して器を直す方法です。

(引用:金継ぎ暮らし「金継ぎとは」https://kintsugikurashi.co.jp/howto/workshop/)


簡単にいうと、”本漆を使うか、使わないか” ということになります。

どちらの方法が良い悪いというわけではありませんが、本漆を使う時には注意することがあります。それは、肌がかぶれてしまう可能性があることと、固まるのに時間がかかることです。
どちらも本漆の大切な特徴ではあるのですが、手軽に金継ぎを試したいという方には簡易金継ぎの方がよいのではないかと思います。

簡易金継ぎなら、ダーニングと同様に道具さえ揃えれば、1人でも気軽に始めることができます。
また、音を出したり体を動かしたりすることが少なく、作業に必要なスペースも小さいため、団地やマンションのような集合住宅でも始めやすいですね。

用意するもの

今回は、関東で金継ぎ教室をされている「金継ぎ暮らし」の簡易金継ぎキットを使用します。

簡易金継ぎキットには、食品衛生法基準をクリアした物と、そうで無いものがあるため、完成後の用途(食器として使うか、そうでないか)を考えてからキットを用意いただくことをお勧めします。
ちなみに、「金継ぎ暮らし」の簡易金継ぎキットは食品衛生法基準をクリアした物で揃えられているため、完成後も食器として使用することが可能です。


〇簡易金継ぎキットの内容

合成うるし、金粉(真鍮)、うすめ液、筆、スポイト、接着剤、エポキシパテ、カッター、
耐水性紙ヤスリ 400番×15枚、耐水性紙ヤスリ 1000番×10枚、さじ、竹串×3本、綿棒×5本、トレイ×3個

〇あったら便利なもの
・指サック
素手で作業すると手が汚れてしまう工程があるため、事前に用意いただくことをお勧めします。

金継ぎに挑戦!

今回は、フタバと後輩のコマチで、陶器の金継ぎに挑戦!
どちらもフタバが家で使っている器で、旅行先で購入したお気に入りの器です。
使っているうちに縁(ふち)が欠けてしまっていたのですが、金継ぎでどんな姿になるのか。とても楽しみです!

①まず、金継ぎする部分に汚れが無いか確認し、キレイにしておくことがポイント。
汚れたままだと接着がうまくいかない場合があるので、細かいホコリなんかもこのタイミングで取り除いておきましょう。

②器が割れている場合は、接着剤を使用して欠片と器を接着します。
次に、欠けやヒビ、接着した割れ目を、エポキシパテを使用して埋めます。
エポキシパテは円柱状になっているので、使用する分だけカッターで輪切りにカット。外側が灰色・内側が白色になっているので、その量が1対1になるように切って練り込んでいきます。
ここで、灰色と白色がまだら模様にならないように、しっかりと練るのが大事なポイントです。

③練ったエポキシパテで、欠けやヒビ、接着した割れ目を埋めて、指でエポキシパテの形を整えていきます。
固まった後にヤスリをかけるため、ある程度形が整っていれば大丈夫です。ここであまり盛りすぎると、次の工程の「やすりがけ」にとても時間がかかるため、エポキシパテの量には気を付けてください!
整ったら、エポキシパテが固まる前に、周りについた余分な部分は取り除いておきます。

④パテが固まったらパテの表面に少量の水をつけて、ヤスリで磨きます。
ヤスリは荒い目から細かい目の順にかけていくと、仕上がりが綺麗になります。
パテが器と同じ高さになり、触るとつるつるするくらい滑らかになったら完了です。

これで基礎が完成しました。
そして、次からは金継ぎらしい作業に入ります!

⑤合成うるし・金粉・希釈液を1:1:1の割合でトレイに入れ、へらで混ぜ合わせます。
トレイを傾け、ゆっくりと漆が垂れるくらいがベスト。

⑥パテで埋めた部分に、筆を使ってうるしを塗ります。その時、筆をゆっくり動かすと綺麗に塗ることができるので、焦りは禁物!
塗る面が広い場合は下地が透けないように、そしてムラが出ないように注意して塗ります。
また、間違えて塗ってしまった部分は、希釈液を付けた綿棒で落とすことができるので、時間をかけて丁寧に塗ってみてくださいね。

これで今日の作業は完了です!
あとは10日間以上乾燥させれば完成です。
固まるまでは、触らずに、ほこりがつかない場所で静かに保管しましょう。


より美しく、作品として蘇る

金継ぎを紹介するために撮影をしながらの作業でしたが、1時間ほどで完成しました!

今回初めて金継ぎに挑戦したコマチからは
「金継ぎについて何も知らなかった超初心者かつ不器用な私でも、簡単にできました!
今回はフタバさんと2人でしたが、1人でも楽しくできる趣味なのでいいなと思いました。
これまで割れたり大きく欠けたりしたお皿は処分していましたが、こんなに綺麗に修復できるならこれからは自分でなおして長く使いたいです♪」
と嬉しいコメント!金継ぎの楽しさが伝わったようで嬉しいです。次は、コマチの器でも金継ぎに挑戦してほしいなあ。

器が欠けてしまった時はとてもショックでしたが、金継ぎで美しく蘇らせることができ、達成感と嬉しさがこみ上げてきました。
お気に入りの器は割れないように、使うのを控えるようにしていたのですが、金継ぎを知ってからはヘビロテできるようになりました!

以前の記事にも書きましたが、金継ぎの作業をしていると、築50年を過ぎても、修繕やリノベーションによって蘇る「団地」に重なる部分があるなあ、と思います。
器が割れたり欠けたりしてしまったことも思い出となり、それを蘇らせることで、さらにその物に対する愛着も増すような気がしています。
団地に対しても、そんな目線で見てみると、なんだが愛着が湧いてきますね。

前回紹介した「ダーニング」も、今回の「金継ぎ」も、お気に入りのアイテムを「新品」の状態と「蘇らせた作品」の状態とで2度楽しむことができるため、愛着が湧き、これからも大切に使おうという思いが強くなりました。

たとえ少し失敗しても、「自分だけのもの」と考えると、それすら愛おしく見えてきます。
どちらも道具さえ揃えれば、今日にでもお部屋の中で楽しめる趣味なので、ぜひ挑戦してみてくださいね。