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special
by yozo

団地で結婚式!? ご近所さんの思いがあふれる手づくりウェディングパーティーの舞台裏

団地でアウトドア・ウェディングパーティー

よく晴れた6月のある日。この日、どこにでもあるような団地の一角で、たくさんの人々に祝福されて結婚式を挙げたご夫婦がいました。この春までココ茶山台団地(堺市南区)に住んでいた、新郎新婦の東善仁さんと恭子さんです。

▽「住みたい団地をつくるには?『茶山台としょかん』としょ係、東善仁さん・恭子さん夫妻が1年半をかけて見つけた答え。」(ソーシャルウェブマガジンgreenz.jp.より)

 

当日はテレビクルーによる取材も。

ご近所さんの思いがありふれた風景を「特別な光景」に変えた

この日は朝から団地に住むご近所さんや子どもたちが会場の準備に大忙し。
団地のど真ん中にある大階段には色とりどりのカーペットを敷いて、この日限りのバージンロードに大変身。その周りには、子どもたちによって無数のバルーンが飾られると、いよいよ今日が特別な日であることが伝わってきました。

当日の案内地図。ご近所さんが書いてくれました。

パーティー会場となるのは普段は子どもたちが遊んでいる広場。ご近所に住む大工さんが作った入場ゲートと特設ステージが設けられ、テーブルの上には善仁さんの友人シェフによる華やかな料理や、恭子さんの故郷島根県の郷土料理が並べられました。

色鮮やかなお料理が振舞われました

新郎新婦初めての共同作業も定番のケーキカットではなく、なぜか「鏡割り」。樽と木槌の鏡割りセットもご近所さんからお借りすることができました。でも、今回は子どもたちもたくさん集まってくれるので、アルコール類はなし。代わりに、某有名梅酒メーカーにお勤めのご近所さんが差し入れてくれた梅酒ならぬ「梅ジュース」で乾杯することになりました。

手づくりの入場ゲート。文字はなんとペットボトルのふた!

ウェルカムボードには東さん夫妻のことが大好きな女の子がふたりの似顔絵を描いてくれました。新郎新婦入場のBGMも団地にお住まいのお母さんと娘さんのデュオによるエレクトーンの生演奏。リハーサルもバッチリのようです。

ウェルカムボード。メガネが特徴的ですね。

この頃には茶山台で活動しているDIYの先生特製の「かんなくずブーケ」も届きました。名付けて『団地ウェディング』。いつもの見慣れた団地の風景が、お昼前にはとても晴れやかな結婚式の会場になりました。

新婦の恭子さんもフラメンコを披露!

きっかけは「茶山台としょかん」で生まれた絆から

では、なぜ茶山台団地で結婚式が開かれることになったのか。
その原点は1年半前の11月に遡ります。

新郎の善仁さんは、大阪府住宅供給公社の団地コミュニティ再生を図る「団地滞在生活型コミュニティ支援プロジェクト」に参画。実際に茶山台団地の1室に入居し、住民として実生活を送りながら、団地にお住まいの方々と同じ環境・目線に立ち、団地の集会所を拠点にコミュニティ支援を行う活動を行うことになりました。

茶山台団地

善仁さんはその集会所を『茶山台としょかん』と名付け、団地内の多様な世代の人々が気軽に立ち寄れる「つながりの場所」として開きました。最初はあまり誰も立ち寄らず待ちぼうけの日々が続きましたが、大人たちにはお茶やコーヒーをふるまったり、子どもたちにはスチールパンという楽器で演奏会を開いたりしながら、誰もが立ち寄りやすい「ゆるーい」雰囲気づくりに努めると、しだいに子どもたちをはじめご近所さんのサードプレイスとして定着しました。

▽「茶山台としょかん」についてはこちら(Facebookページ)

当時、善仁さんは独身。恭子さんとはすでにお付き合いをされていたものの、恭子さんは神戸市内在住。泉北と神戸の遠距離交際に不安を感じていたそうです。なんと、そこで二人は「だったら結婚しよう!」となり、このプロジェクトに新婚生活を捧げることになったそうです。

東 善仁さん・恭子さん

恭子さんも新たに茶山台としょかんのメンバーに加わり、さまざまな活動やイベントを重ねることで、団地にお住まいの方々はもとより、団地の枠を超えた地域との更なるつながりが生まれてきました。

『団地ウェディング』は、東さんご夫妻が新婚でありながら披露宴を行っていないと知ったご近所の皆さんの発案で、団地の敷地をいっぱいに利用してウェディングパーティーを開催し、お二人の新たな門出を祝おうというもの。1年半に及ぶプロジェクトで育まれた絆を基に、住民の方々と東さん夫妻の協働で、企画・運営が行われました。

茶山台の子どもたち抜きではこのイベントは語れません。

手づくりのウェディングパーティを通して見えたもの

午後1時、会場に集まったのは150人を超える人々。新郎新婦の友人のほか、団地に住む「ご近所さん」も多数集まりました。親子デュオによる「オブラディオブラダ」のエレクトーン演奏に導かれて、新郎新婦の入場が始まりました。

エレクトーン演奏に導かれて新郎新婦入場!

ふたりは白いパラソルの下で腕を組み、ゆっくり、ゆっくりと大階段を下りています。新郎新婦に贈られる、たくさんの人々の拍手と喝采はしばらくの間止むことはありませんでした。

団地の敷地をいっぱいに使った、まさにアウトドア・ウェディング。

他では見ることができない、その素晴らしいできごとは、東さん夫妻が長期間かけて、試行錯誤しながら取り組んだ団地コミュニティづくりの「答え」にほかなりません。

いつまでもお幸せに!

現在、茶山台としょかんは、東さん夫妻の思いとともに地元のNPO法人にしっかりと引き継がれ、ご近所さん同士が交流する茶山台団地のコミュニティの拠点として、今日もゆるーく開館しています。

 

茶山台としょかん

 

 

■団地情報
茶山台団地(大阪府堺市南区茶山台2丁1番他)

「ニコイチ」や「リノベ45」といった提案型リノベーション事業に加え、DIYしたいけどやり方が分からない方を支援する工房「DIYのいえ」を開設。また、団地内にとどまらず地域住民の方との繋がりを目指した「泉北レモンの街ストーリー」、健康をテーマに扱う「まちかど保健室」、新鮮野菜の移動販売「ちゃやマルシェ」、そしてコミュニティスペース「茶山台としょかん」と「やまわけキッチン」などのコミュニティ事業に至るまで力を入れて取り組んでいる公社のリーディングプロジェクト団地です。