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直近3年間で164世帯の30代以下が新しく入居
大阪府の南部に位置し、まちびらきから半世紀を迎えた泉北ニュータウン。
その一角である泉北高速鉄道「泉ケ丘」駅から徒歩約10分の場所に、大阪府住宅供給公社(以下、公社)が経営する茶山台団地(堺市南区茶山台1丁・2丁、28棟924戸、2023年2月末時点で870戸が入居中)があります。
団地のすぐ西側にある大蓮公園は、春には池の水面に映る満開の桜が魅力的です。
公園内では野鳥のさえずりが響き渡り、南北に続く園路や、芝生広場などがあります。
News!⇒ 2020年8月1日、大蓮公園に〝憩い〟と〝集い〟の拠点がオープン!
かつては満室の時期もあった茶山台団地は、若者離れが進み住民は年々減少、住民の高齢化も問題になってきました。
この茶山台団地に近年、若い世代が続々と入居してきています。
2019年度から2021年度の3年間で、実に164世帯もの30代以下の世帯が新しく入居しました。
また、長年下落傾向だった入居率は、2017年を底に上昇に転じています。
なぜ茶山台団地で若い世代の入居が増えているのか?
そのカギはオーナーである公社が手掛ける「団地ライフが楽しくなる」さまざまな取り組みにあります。
以下、その理由を探っていきます。
理由その1
子育て世帯に人気!2戸を1つにつなげるリノベーション「ニコイチ」
隣り合う2つの住戸を1つにつなげ、約90㎡の広々とした空間を実現することで、子育て世代の呼び込みに成功しました。
「ニコイチ」は、若手建築デザイナーらの提案によるデザインビルド方式のコンペを実施することで、先進的なデザイン性の高いプランを生み出しており、2017年度グッドデザイン賞や2019年度都市住宅学会長賞を受賞しています。
2戸を1戸にリノベーションした、新しい団地のくらしスタイル「ニコイチ」
公社は、2016年度から2021年度まで計25戸のニコイチを供給し、2023年2月末時点では入居率100%の満室稼働となっています。
また、ニコイチに入居した子育て世代が新しいアイデアを次々と生み出し、団地活性化の担い手になるなど、好循環を生み出しています。
2019年には、公社が「来たれクリエイター!プロジェクト」を始動し、2020年3月から20代の若手クリエイター2人がルームシェアでニコイチに入居。
団地活性化に向けて茶山台団地での生活の様子などを定期的に発信しています。
理由その2
若年夫婦や単身世帯に人気のリノベーション「リノベ45」
若年夫婦や若年単身者を誘引することを目的に、公募による民間事業者によって設計・施工されたデザイン性の高いリノベーションプラン『リノベ45』。
45㎡の限られたスペースでも快適にくらせるよう、若い世帯に合わせてリノベーションしています。
若年夫婦や単身者のための新しい団地リノベーション「リノベ45」
理由その3
団地の集会所を多世代が集まる空間にした「茶山台としょかん」
「茶山台としょかん」とは、2015年11月に茶山台団地内にある集会所を活用した、多世代が集まるコミュニティスペースです。
公社が団地イノベーション事業の一環として、利用機会の減った集会所を再活用し、ご近所さんからの持ち寄り本を集めて、「としょかん」として再スタートしました。
「としょかん」という名前がついていますが、本を読みに来るだけにとどまらず、子供から親、高齢者まで多世代が気軽に集まる場所になっています。
現在は、毎週3日間、NPO法人のスタッフとボランティアの協働のもと運営しています。
理由その4
賃貸でもDIYができるスマリオの「つくろう家」
入居者の新たなニーズに対応することで、若年層を中心とした新規入居の促進を図るため、入居後にDIYができる『つくろう家』というブランドを立ち上げました。
『つくろう家』は、壁紙やシートを貼ったり、ペンキを塗ったり、ちょこっとDIYでくらしのバージョンアップできる『つくろう家Basic』と、Basicでは物足りない、がっつりDIYをしたい方向けのプラン『つくろう家Pro』があります。
■『つくろう家Basic』の特長
DIY工事部分の原状回復義務を原則免除
壁や天井の塗装替え、クロス張り替え、木部への釘打ちなど、公社が用意したメニューのDIY工事部分は、退去時に元に戻す必要はありません。
既存入居者も申込みが可能
対象物件であれば、新規入居者はもちろんのこと、既存入居者も申込みが可能です。
多彩なDIYメニュー
壁や天井の塗装替えやクロス張替え、木部への釘・ビス打ち、床のクッションシート張替え、手すりの設置など、多彩なDIYメニューをご用意しています。
■若年層を中心に制度利用者が増加。
茶山台団地では2019年ごろからDIY届出者が急増し、現在は66件に上っています。(2020年3月末時点)
特に、20代・30代の利用者が約半数(49%)を占めており、若年層を中心にDIYが浸透しています。
また、実際に制度を利用している入居者にアンケートを行ったところ、「塗装替え」や「棚・カーテンレールの設置」などのメニューが人気であり、DIYをすることで「楽しかった」や「部屋の雰囲気が変わった」という声が多く、利用者は自分好みの住まい作りを楽しんでいます。
理由その5
「つくろう家」の拠点「DIYのいえ」
2019年2月16日、茶山台団地の一室にDIY工房「DIYのいえ」がオープンしました。当日は記念のワークショップも開催され、多くのご家族連れで賑わいました。
「DIYのいえ」は茶山台団地16号棟1階の2住戸をつなぐようにしてつくられた、DIY専用の工房兼コミュニティスペースです。
茶山台団地では「つくろう家」(詳細は前述)の導入によってDIYへ感心を示す方が増えています。一方で、「部屋をDIYしたいけど、何からどうやって始めたらいいかわからない…」という声もお聞きしていました。
そこで、もっと多くの方に、もっと気軽にDIYを楽しんでいただくための常設拠点として開設したのが「DIYのいえ」です。
作業台を備えた工房内にはノコギリやインパクトドライバーなどの各種工具を取り揃えており、DIYアドバイザーの資格を持つ専門スタッフの技術サポートを受けながら作業を行う事ができます。
DIYに関するご相談はもちろん、団地のサイズにあわせて作られたパーツなどの購入も可能。また、プロジェクターを備えた部屋もあるので、セミナーやワークショップ等にもご利用いただけます。
「DIYのいえ」は毎週土曜日・日曜日を中心にオープンしています(時間は10:00~17:00)。運営は地元堺市のリフォーム会社 株式会社カザールホームのアドバイザーが担当しています。
オープン日はフェイスブックページでご確認ください。「DIYのいえ」フェイスブックページ
理由その6
団地の一室を改装した、丘の上の惣菜屋さん「やまわけキッチン」
茶山台団地の一室に2018年11月、イートインもできるお惣菜屋さん「やまわけキッチン」がオープンしました。
「やまわけキッチン」は、公社が茶山台としょかんを運営するNPO法人SEIN(サイン)と連携し、「地域のニーズ」+「みんなが集う場づくり」+「団地資産の活用」の一石三鳥を狙った新しい取り組みで、住民のアイデアによってクラウドファンディングを活用し、内装は住民たちのDIYによってつくられました。
『やまわけキッチン』では、手作りのお惣菜を一品100円~で小分け販売し、また、お惣菜にご飯とお味噌汁が付いたリーズナブルな定食メニュー(500円~)もあります。
コロナ禍の現在は、新たにお弁当の宅配も始めました。
毎週月・火・金・土曜日、11:00~15:00に茶山台団地21棟302号室で営業しています。
まだまだ続く!「団地ライフ」が楽しくなる取り組み
茶山台団地のこのような取り組みは、これまでテレビ、新聞、雑誌、インターネットなど、数多くのメディアで取り上げられ、国や自治体など様々な団体からの視察も殺到しています。
入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ(2019.3.18東洋経済オンライン)
団地再生のカギは“住民共創”にあり。茶山台団地再生プロジェクトを支えたコミュニケーション戦略とは(2020.3.11 PR GENIC)
公社と住民との共創による茶山台団地の団地イノベーションは、まだ始まったばかりです。
トライアンドエラーを繰り返しながら、長い目で進めていくことが大切だと感じています。
現在は公社で「茶山台パーク化プロジェクト(仮称)」を構想しています。
今後の茶山台団地も期待してください。
「ニコイチ」や「リノベ45」といったリノベーション事業に加え、住民さんと地域住民の方との繋がりを目指した「泉北レモンのまちストーリー」、健康をテーマに扱う「まちかど保健室」、新鮮野菜の移動販売「ちゃやマルシェ」、イートインコーナーがある「丘の上の総菜屋さん『やまわけキッチン』」、DIY工房「DIYのいえ」、そして「茶山台としょかん」などのコミュニティ事業に至るまで力を入れて取り組んでいる公社のリーディングプロジェクト団地。