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special
by tsujimoto

団地の空き家で健康力がアップできるってほんと? 茶山台ほけんしつの出張オークカフェ初日に密着

大阪府堺市南区にあるスマリオの茶山台団地には、健康力をアップする空き家があります。
その名も『茶山台ほけんしつ』。
2023年の10月にオープンしたこの場所では、さまざまなパートナー事業者が曜日ごとに当番をもち、地域の方の健康を支援するプログラムを行っているのです。

そんな『茶山台ほけんしつ』に参加するパートナー事業者の1つ、グランドオーク百寿による『出張オークカフェ』。10月16日、当番初日の様子に密着しました。

団地の空き家にカフェがある理由

オークカフェは、茶山台団地にほど近い、特別養護老人ホーム『グランドオーク百寿』にある地域密着型のカフェ。
栄養バランスの整ったおいしいご飯やコーヒーを楽しめるオークカフェは、誰でも利用ができて、コミュニケーションの生まれる場にもなっています。

茶山台団地では、その出張版として月に2回、『出張オークカフェ』をオープンしています。

『出張オークカフェ』を切り盛りするのは、グランドオーク百寿に勤める社会福祉士の岡村さん。

地域の人々が健康で生き生きと暮らせるよう、カフェの他にも地元団体が集まるイベント『ちゃやフェス(注1)』を開催したり、地域のために様々な活動を行うベテラン職員さんです。
同じくグランドオーク百寿に勤める田淵さんもカフェの運営をサポートしています。

ですが、今日の開催に少し不安な様子の岡村さん。

「これまでは茶山台としょかん(注2)でやってきたので、住民さんがどのくらい来てくれるかも予想が難しくて、席の配置も悩むくらいです」

2022年10月に開始した『出張オークカフェ』は、これまで茶山台団地の集会所にある『茶山台としょかん』にて開催されていました。

開始からちょうど1周年のタイミングで、団地の空家を活用した健康拠点『茶山台ほけんしつ』がオープンし、この日は『茶山台ほけんしつ』での初めての開催だったのです。

地域住民が世間話に花を咲かせる出張オークカフェ

カフェで提供するコーヒーの準備をしながら、少しそわそわした空気の中、開店時間を待ちます。

開店時間の10時を少し過ぎ、もうすぐ30分たつという頃に、初のお客様となる住民さんがご来店。
住民さんは常連で、岡村さんも既に仲良しです。

「席の配置はこれでいいですか?」と居心地を確認しながら、お話をしている間にまた1人女性の住民さんが。
まだ少し寂しいカフェの様子を見て、その方が「○○さんも呼ぶわね」とLINEでどんどん団地のお友達に声をかけ、あっという間に女子会が始まりました。

「自宅にいる旦那にもお土産にコーヒー持って帰るんよ」「その髪色素敵だわ~」「ネットの契約がめっちゃ高くて!」さまざまな話題で盛り上がる様子にこちらも元気がもらえます。

カフェに集う住民さんたちは、初めて伺った筆者にも友達のようにきさくに話しかけてくれて、楽しい時間が流れます。

その後も3人組の女性たちやお一人でふらっと休憩しに来られた男性の方、団地の住民さんだけでなく近くにお住まいの方までが次々といらっしゃり、全てのテーブルが埋まって10名ほどのお客さんで賑わいます。

団地の中で本格派コーヒーの優しい味を楽しむ

『出張オークカフェ』でいただけるのは、コーヒーや紅茶にクッキー等のお茶菓子。
いずれも1つ200円です。

特にコーヒーはオークカフェでも取り扱うオリジナルブレンドの豆を、その場でハンドドリップしてくれます。
オークカフェオリジナルブレンドは、苦みと酸味のバランスもほどよく、あっさりとして飲みやすい、落ち着いた味のコーヒー。

『茶山台ほけんしつ』は団地の1室を使用しているので、窓を開けるとよく風が通る間取りになっています。
入れたてのコーヒーを飲みながら、お部屋を通り抜ける風を感じる時間は、まさにほっとひといきという雰囲気。

住まいのすぐ近くにこんな風にゆっくりできる場所があると、気持ちもリフレッシュできそう。
団地住民さんたちが常連になるのもうなずけます。

団地内のカフェが健康サポートにつながる理由は?

お昼前になると、来ていた住民さんも少しずつ帰路につき、大盛況だったカフェも落ち着いてきました。
カフェスタッフとして忙しくしていた岡村さんや田淵さんもひと段落、住民さんたちと世間話をします。

住民さんの「ちょっと相談したいこと」をお話しすることもあるそう。

『出張オークカフェ』が他のコミュニティーサロンと違うところは、社会福祉士などの専門知識を持つカフェスタッフに家族や自身の介護・生活のことを相談できるところ。

ここでは、地域の方同士がつながり、カフェで楽しく過ごすことで元気になれるだけでなく、「役所や施設に聞きに行くのはハードルが高いけど…」と思うような、ちょっとした不安を解決するお手伝いをしてくれるのです。

住民さんたちがみんな帰られた後、岡村さんに『茶山台ほけんしつ』当番初日について伺ってみました。

筆者「どのくらい来てくれるかなぁとお話しながら待っていましたが、大盛況でしたね」

岡村さん「そうですね、こんなに来てくれたのは初めてだと思います。『茶山台としょかん』でやっていた時は、顔ぶれに変化はあっても、毎回4~5人くらいという感じだったので」

筆者「そうなんですね、ではスタートは絶好調でしょうか?」

岡村さん「たくさん来てくださってとっても嬉しいんですが、コーヒーの準備に忙しくて、私自身がゆっくり住民さんたちとお話できなかったのがもったいなかったですね。コミュニケーションをとってこその『出張オークカフェ』だと思うので」

今日はずっとドリップしっぱなしでしたと笑いながら話してくれた岡村さんの温かな雰囲気に、住民さんたちから信頼されている理由が垣間見えた気がしました。

温かいコーヒーだけでなく、毎日の生活にそっと寄り添ってくれる姿勢にもほっと安心できる憩いの場所。
これからも、団地や地域の住民さんの安心を支える『出張オークカフェ』が長く続くことを願っています。

1)  ちゃやフェス
茶山台フェスティバルを略して名付けられた。茶山台全住民が楽しく暮らせるまちづくりの一環として、グランドオーク百寿の運営を担っている社会福祉法人よしみ会が主催する秋祭りイベント。地域連携グループ「ちゃやミーツ」とも協力し、地元を活気づけられるような催しを目指して茶山台近隣センターで行われ、地元の事業者が多く出店してにぎわう。

2) 「茶山台としょかん」
茶山台団地内で使われていなかった19棟集会所で始まった、本を介したコミュニティースペース。
団地住民はもちろん、誰もが自由に参加できる。平日の午前中は近隣住民の憩いの場で、午後は小学生が宿題をしたり、土曜日の午前中は未就学児連れの親子が遊びに来たりと、時間帯によってバラエティに富んだ表情をみせる。
「0縁(ゼロエン)マーケット」や「オトナカイギ」など様々な名企画が生まれた場でもある。
開館:水の13:00~17:00、金・土の10:00~17:00(12:00~13:00は閉館)
※営業状況など詳しくは インスタグラムでご確認ください