団地暮らしの「お困りごと」を募集したところ、多くの方から黒カビ対策のお悩みの声をいただきました。
そこで今回は、お掃除で有名な株式会社ダスキンの掃除のプロフェッショナルである「サービスマスター」の佐藤さんにご協力いただき、掃除の悩み解決法をご紹介します。
▼ 参考: ダスキンの『壁・キッチンの黒カビ撃退法』の過去記事はこちら
目次
団地暮らしの「掃除の悩み」
今回お邪魔したスマリオにお住まいのMさんは、団地暮らし歴約1年。
以前のお住まいは戸建住宅で、初めての団地暮らしです。
慣れない団地暮らしに戸惑う中でも、一番のお困りごとは「結露とそれに伴う黒カビです」と話すMさん。
YouTubeで調べたりして対策をしてきたものの、お手上げ状態…。
そこで今回は、お掃除のプロであるダスキンさんにご相談することに。
室内を見渡しながら「綺麗にお住まいですね。結露と黒カビでお悩みとのことですが、プロの目線でより気持ちよく暮らすための掃除のアドバイスとして、黒カビだけでなく、キッチンの換気扇なども見ていきましょう」と、佐藤さん。
ダスキンの掃除のプロフェッショナルは厳しい研修をクリアした方々のみで、佐藤さんも、なんと掃除プロ歴15年のベテラン。
室内を見渡しただけで、団地ならではの掃除の注意点にすぐ気が付いたようですよ。
壁に黒カビ、原因は「湿気」
(画像の一部にモザイク加工をしています)
パッと見ただけでは、わかりづらいかもしれません。部屋の隅の方に何かが取り付けられていますが…これは?
小まめに拭き掃除してもイタチごっこで再び発生する、壁の黒カビに困り果てたMさんが壁面に張り付けた、カビ対策グッズでした。
「カビ自体が健康に良くないですし、少しでも体に害のないように自然なものがいいかと思って。でも、なかなか思うような効果が得られなくて…」。
この商品の本来の用途は浴室を想定しており、バイオの力がカビの栄養源を素早く分解することで抑制&予防につながるというもの。以前のお住まいではそれなりに効果を実感していたものの、現在の団地暮らしでは効果が薄く感じているそう。
「カビの三大発生要素は湿度(水分)・温度・栄養ですが、この黒カビの大きな原因は、外気温と室温の差で生じた結露による水分だと考えられますね。団地の鉄筋コンクリートの構造は、非常に気密性が高い造りになっているからです」と佐藤さん。
この商品が悪いというより、今回は原因に対する対策がちょっと違ったみたいですね。
壁の黒カビにさよなら! プロの3ステップ
限られた団地の室内では、壁からゆとりをもって家具や家電を設置することが難しく、湿気のたまりやすい部屋の隅や家具・家電の裏側には、気を付けていても黒カビが発生しやすい傾向が。特に団地は気密性が高いので、注意が必要です。
(画像の一部にモザイク加工をしています)
早速、佐藤さんに黒カビの掃除方法を実践していただきました。
ステップ①「水拭き」
黒カビ掃除の最初のステップは、薬剤…ではなく、なんと水拭き掃除から。
軽く水に濡らしたダスター(布)で水拭きをしてみましょう。軽めの力で小刻みに動かして丁寧に汚れを落としていきます。
佐藤さんの説明によると、使用するダスターは柔らかいマイクロファイバーのものがオススメ。
毛先が細かいので汚れの中までしっかり繊維が入り、塗装や壁紙などで少し凹凸があるような場合でも汚れが取れやすいのだとか。
どこでも売っており、100均でも購入可能です。
「洗剤を使用しなくても、軽く水拭きするだけで、これだけ取れますよ」と見せてくれたダスター。結構、黒カビ取れてます!
「黒カビが発生した場合、いきなりカビ取り剤を使う方も多いと思いますが、汚れの上に乗っているカビもあります。また、逆にカビの上に汚れが乗っている場合もあり、まずは、そのカビを守っている汚れを落とさないと、カビ取り剤が黒カビに届きません」。
なるほど、それで “黒カビ=即カビ取り剤” ではなく、まずは水拭きからスタートするんですね。
「人にも環境にも優しくあるためには、水だけで取れるに越したことはないですからね。
やはり薬剤は素材を攻撃しますから、壁のペイントや壁紙など、素材自体を傷めてしまう可能性があります。素材を傷めないためにも “水拭き→弱い薬剤→強い薬剤” と段階的に進めていくのがポイントです」と佐藤さん。
ダスキンでは、始めから業務用の強力な洗剤で解決しようとするのではなく、地球環境やお客様への健康に配慮し、洗剤の使用は極力控えて掃除することを大切にされているそうです。
ステップ②「アルコール拭き(濃度が薄いタイプ)」
ステップ①でカビが取りきれていない場合は、次のステップへ。
ここでは、アルコール拭きを行います。
ステップ②で使用するのは、アルコール濃度の “薄いタイプ” のもの(約50%)。
ご家庭の場合は、キッチン用のアルコール除菌タイプがこのタイプにあたります。
アルコールは、黒カビ部分にじかに吹きかけるのではなく、ダスターにアルコールを染み込ませてから、まずは目立たない所で変色しないか確認してから使用しましょう。
アルコールに限らず、薬剤を使用した掃除の基本として、「洗剤によっては材質を傷めるものもあるので、まずは、洗剤をスポンジやぞうきんにつけて目立たない所で試してから使う」ようにした方がいいそうです。
覚えておくといいですね!
ステップ③「アルコール拭き(濃度が濃いタイプ)」
まだ取り切れていない黒カビがうっすらと残っている場合は、さらに次のステップへ。
ステップ③で使用するのは、アルコール濃度の “濃いタイプ” のもの(約70~80%)。
ご家庭の場合は、手指消毒用のアルコールが、このタイプにあたります。
少しずつ、優しく、壁の素材を傷めないように拭き掃除を行う佐藤さん。
先ほどと同じく、アルコールをダスターに染み込ませてから使用しましょう。
また、面倒だからといって、いきなりアルコール濃度の濃いものから使用すると、壁の塗料が取れてしまう可能性もあるそうなので、ご注意ください。
(カビ対策グッズの粘着テープで壁塗装が一部剥がれています)
お掃除のプロの技で、壁の黒カビがこんなにスッキリ綺麗に! 悩まれていたM様もご満悦の様子です。
アルミサッシの黒カビ掃除は、無理は控えて
Mさんは壁だけではなく、こちらの窓周辺の黒カビでも悩まれているそう。
「冬の結露がすごくて、窓下にタオルを置いても、すぐに絞れるほどに(笑)。結露防止のテープを貼って少しはマシになりましたが…」と、どうやらお悩みは深刻。
窓枠下の木部にマスキングテープを張って、黒カビが木部に深く根差さないように対策をしているものの、それでもマスキングテープの上に黒カビが発生していました。
壁と同様の手順で、丁寧に黒カビ掃除を施していく佐藤さん。
素材を傷めないためには、やりすぎてもダメなので判断が難しいところ。
今回の窓枠下の木部は、アルミサッシが使われている部分もあることから、プロの目で見て、これ以上の薬剤使用は控えたほうが良いという判断になりました。
団地に使用されているアルミサッシは薬剤で腐食しやすいため、注意が必要なのだそうです。
ちなみに、薬剤での腐食は通常損耗に該当しません。退去時補修にかかる費用負担との兼ね合いを考えて行うようにしてくださいね。
黒カビの湿度予防はどうしたらいい?
ダスキンさんのお掃除で、スッキリと除去できた黒カビ。この綺麗な状態を維持するための対策についても、佐藤さんに聞いてみました。
「黒カビの三大発生要素<湿度(水分)・温度・栄養>のうち、一つでもなくなるとカビの発生をかなり抑えられます。今回の原因である結露は、外気温と室温の差によるものなので、発生源である鉄筋コンクリートの構造上の改善は難しいですが、除湿して湿度を下げることで、少しでも結露を抑えることができますよ」。
佐藤さんの話にフムフムと大きく頷いていたMさん。
「除湿と言えば、色々試してみて、うちで効果がテキメンだと感じたのが除湿器です」。
Mさんのお宅の除湿器は、段ボール箱を思わせるようなしっかりとした大きさがあり、インパクトがありますね。
また、室内の空気を循環させて湿気を下げるには、サーキュレーターを上部に向けて使用するといいそうです。
それぞれの生活スタイルに合ったものを取り入れて、除湿対策してみませんか?
今回は、水拭きできる壁の掃除方法と水回りの掃除方法をご紹介しました。
お住まいの住宅の壁の素材によっては、水拭きできない場合もあります。
ご注意ください。
佐藤さんに団地暮らしの「換気扇周り・エアコン」のお掃除についても教えていただきました。
続きは 後編記事 をご覧ください。
▼ 団地暮らしの掃除の悩み、ダスキンのお掃除のプロがスパッと解決!【黒カビ・換気扇周り・エアコン】後編 はこちら